水の透くふうな音の境界にくりかえす夏の日のいつか、知らない夜のはくはくと薄くかさねられたみたく陽濡れの隧道をわたりあるいた。
ねえ、滲んでたゆたうとりどりの、螺旋のまひるにどうしたって咲いてだからやかましい夢を見たの、わたし、灼けつくあわいの熾の絲の、憶えそこねの星のなまえに似るんだなんてなぞえるゆびさえ崩れておちたひとりごと、この晴にうつして睡るよに、しずかに。
褪せはてついえてからからと、ちいさな嘘がばかみたく棄てられた季のゆきはてぞらまで纏わって好きだったんでしょう。忘れることすらわすれるくらい、あざむく四涯に花ひとつ、結えていろづくたしかな終焉を待っていたんでしょうどうせ。失くしてしまった言葉だけ、拾われなかった祈りだけ、報われたかった昨日だけがそれきりばかり斎沙のつめさきかすめもしないでどうしたってほどかれたがったんでしょうあなた。
けれど、なかないで。
さよならを言うんだとおもった。
ゆく舟の還りようのないことは誰にも知れていた。
降る熱の尽きて、降る影の尽きて地表のぜんぶがおまえなんかいらないいらなかったと喚きちらすいまになってもかなしいだとかさみしいだとか考えてやるつもりなんてほんのひとかけらだってあたしにはなかった。
なのにあなたはうずくまってちいさなこえでせかいにうたいかけてこのうえなくきれいだった。
きらいになんてならないふうだった。
思い出をあげる。
あなたがわすれたあなたの今日を、わたしだけがいつまでもおぼえていてあげる。
遠いとおいどこまでもとどくひかりの温度を、わたしだけがえいえんにおぼえていてあげる。
だから、なかないで。
なにをわかるでもない私だった。
なにをわかるでもない貴方だった。
なにをわかるでもないのだからなにをもわかれないでわかられもしないわたしたちだった。そうでしょう、いまだって。
つうずるかなたのひとひらだってありうべくもない私でしょう、貴方。
そんなんでだって信じる文聲捨てきれないのが貴方でしょう、ずっと。
きいてるの。
ああ、あの月の話がしたい。
くだらない、くだらない、くだらない石っころの話がしたい。
大丈夫だって、思えるくらい。
だいじょうぶだって、おもわれるくらい。
どうか、なかないで。
コメント
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