『アウグストゥス』

ここに結末はない

隠された神などいない

黄昏時に舞う影も

徴もきざしもない

あるのは機械仕掛けの陶酔と二重の秘蹟

解き得ぬ迷宮と人工の救済

いつわりと諧謔

魔術と綺想

曖昧なくちづけ


天使の仮象化がはじまった頃の話をぼくたちは好んだ

獣の素描と摸倣とをあなたは好んだ

線は錯雑としていたし動作は鈍かったが美しかった

このうえなく


湖に群れをなす星星は恋する者の幻覚に似ていた

こゆびのさきから伝染してゆくやわらかな妬みをおまえとぼくとで定性した

小舟にねむっていばらを彩る薄青の空がわたしたちの胸を濡らした

言葉のしずかに流れてゆらめく

永遠は切断された歴史と憂鬱とをこの手に握らせた


矯正されるまえ

まだ透明だった魂にちいさな隠喩を埋めこんだ

いくつかの深淵と罪業

きれいなお菓子も一緒くたにしてやった

よろこんでくれたろうか


こどもたちは詭弁と恩寵とによって誘導されどこまでも神話的に狂っていった

知性とか感情とかいったものの不可解さを理解できたものはいなかった

日に数回の虚言を重ねてぼくたちは七歳になり十四歳になり二十一歳になった

なにもかもが懐かしかった

なんの意味もない


制動された文体は飼いならされた過剰を志向する

矛盾と懐疑と崇拝とを綜合することで詩句の秩序だった配列が可能となる

ぼくらは倒錯ではない

ぼくらは歪曲ではない

ぼくらは運命ではない

ぼくらは真実ではない

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