日に幾たびだか見る空の、かさなるふうに揺らいで酔うの、わたし。
うずくまって縫う風花は疴濡れにきさいだ頸すじばかりを銜みこんで弓なりに撓る、爪さきに仮象する、ならば、ねえ、色地の薫らぐ矩苑にさざれて空ごと透く夜の波みたい、ゆき道どれかの靡果てにつうじて綾綴じごしにも添うみたい、うそみたい、だから音律のささらたって知らない翳すら汀に夢みる小燈は、かわりのいつにもないってふりして哥ってずっとうるさかった、なのにほんとうひとつもわかりやしないでわらっていたんでしょうどうせ、あなた、死ぬとかどうとか生きるとか、痛いとか、いたいとかいたいとかいたいとか、いたい、いたい、いたいんだってことをなんでもないことのように抛りだしてあの子のなにをみていたつもりなんだよ、おまえ。
私覆に覗いて失くしたものの輪郭ばかりなぞる気持ちでいるの、なんにもどこにも触れないでだってつたわる好きなら勘ちがい、していたいんなら散りばめて、星ごと無涯に還そうよ、いますぐに。
きれいだよって言いたくて、いつかはきみに、それだけ抱えてだから、詩篇に依りたつ世界だなんてものだってぼくたちは信じていたかった。まだあまい水の玄脈を象って九界に渺化する。四元の虚邈にまじりあって花岸を敷きはせる。窓辺に灼けつく沙ばかり、残燁めかして爛れた耳朶すら夕明けのまがいにひさめかす。
結晶みたいに舌先に、いつわりだろうとそのつめたさを確かめるのは、もうながく睡らないちいさな手のひらにだって零れる絲のあることを、きっと、知ってほしかったから。
月の子どものたてる、あらゆるいちどのはじまりの、いちどっきりのおわりのいつか、時間なんてありもしないものをあるふうみたく置きかえる、旋律、静かなつらなり、毀れてしまっただれだかの──とぎれとぎれのかすかな聲に似た音のこと、知っていますか。わからない? そうね、先生も……どうしてかしら、先生は先生の知らないひびきのどんなうつくしさだってあのひのおもいですこしだってかすめないであいしてて、なのにあたしはあのこのゆびさきのゆうみたくつむぐすべてのことを、すべてのおとをどれほどすきでいたかということをもうおぼえてはいなくって、なまえをわすれたの、さがしてみてもどうしても、なんで、さいしょからいなかったみたいにそんなふうにあたしをおいてったんだろう、なんで、なんにもなかったみたいにぜんぶをささげていのらなかったんだろう、なんで、なんて、あたし、なんでいまさらおもうんだろう。
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