『魔術師』

渺架に星の骨格標本のふわふわと並んでいます。雪みたいで、けれども反射の具合によっては頭蓋にも似ますから、伏し目がちになる年もありますが、しかし見ずにはいられません。わたしは先生の家を訪れるたび、これらの、無数の糸の折り重なった飴細工のような亡骸を眺めます。永遠を経てゆきついた今が、削ぎ落された本当だけを遺しているのが好きです。このうえなく。


先生は特別な方ですが、わたしが胸裏に抱く特別は機関が先生に期待する特別とはちがった意味での特別で、入り浸る理由もそれで間違いありません。もちろん、どんな特別かまでは教えません。いやよ。


先生は教導の時間が来るまでわたしを放っておいてくれます。わたしに与えられたほんのわずかな自由です。わたしは、大抵はおとなしくしていますが、ごく稀に地下室に潜りこみます。圧搾された人々の記憶が高次潮域に貯蔵されて、まだ象られない色にうすくかがやいているのがきれいだからです。いつ、なんのために用いられるものなのかは通達されていません。先生も教えてはくれません。ただ微笑むだけで、わたしの髪を、指先に、いつもその指先に、絡ませて、微笑むだけ、それだけです。だからわたし、ここにいるの、先生。


「雪解蜜と月の沙ではどちらが甘いか、あててごらんなさい」


わらひのひあいわたしのしたにわらひのひあをゆいはへへひうわたしのしたをゆびさきでひくへんへえのあいおひおいほあひへせんせいのあじとにおいとがしてほえはあそれからひんいおのひうふほきんいろのしずくとひんいおのはへあほあぎんいろのかけらとがはひひあっへまじりあってわあひをいあひまひあわたしをみたしました


「あなた、いま自分がどんな目をしているか、わかる」


先生はときどき意地悪です。甘いのは先生。あとは知らない。


外域には空がいくつかあります。窓からは、朽ちた神殿とたくさんの光とが見えます。先生はそのどれもに名前をつけましたが、すべて御伽噺になってしまいました。翅の縫いつけられた妖精なんてばかみたいだって、どうして信じなかったの。夜は魔法だった。贈り物だった。なのにみんなそのことを忘れて、子どもたちに呪いをかけた。誰もが生まれては死んでゆくだけの燈に成り果てた。ねえ、本当に、あの日、彼らの声を聴かなかったか?

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