わたしなんて無い
わたしなんてものはないのどこにだってありはしないそれだから翳した
てのひら
むこうがわ
薄闇に再生された夜は余韻と音とあたたかな祈りを孕んで星の死骸とだって区別がつかないぼくたちはもう役にはたたない
はじめのことばは水彩
書きとめられれば深淵をきざした
愛の透徹、ゆきさる者らの異端を証してともしびにゆらいだかすかでも、水底、憶えているのよいまだって、忘れないでいるのよあたしただのひとりもいちどきりもいまでも、知らないままでもよかった青さは空にはすこしも還りやしないであなただけの方舟だった
記憶は記録で保存されて世界ぶってうるさいきたない
おまえにわたしがわかるわけなんてこれっぽっちだってないの知らない
引く波、つめたさひとつも送信しないで騙りうる次元なんて永遠にだって結ばれなかったどんな目をして聴いてる?
寄る風はふたしかで消えたいいつだってそうだよあたしたちは消えたい、死ねない
雑多なばかりの器官をならべてからっぽを奏でた
まだ咲かないで憂鬱はやさしい温度を綴りついでゆくのささめくみたいな詩篇に零れて纏わるひかりはいとしい覚めないでおねがい
古びた書物は帆と心象とを奉げて地平を分節する
ねえ、知ってたの
あなたなんて無い
あなたなんてなかった
あなたなんてない
ひとつさえ
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