いついつごろかの流転のみぎり、永遠の断絶にたゆたう朽葉の宮と、其処に暮す少女の在るふうに聴いた。
時を仇、沙を朋とし老いもせず、死すらも逸した境界になりわうは屠竜、不定に彷徨う陽月は遠く、名の古去りに散じた端伽に褪せざる索莫を宿しながら、既往に描いた無尽のひとの、私を呼ばわりゆきわたる聲、夢見に流るる水環のかざり、ゆび、ちいさな、やわらかく、しらしらと刺咲きのひかりの濡れたみたいにましろの膚をひずませる、花みたいな……あなた、あのね、私はあなたに逢いたかった、知っていますか、いくつもの真、いくつものたしかさの透じてひさしいいま、偽の累累と九淵を結びつつあるいとわしいいま、さんざらと、やかましい、このいまを棄つ術の失せはててもう無いなんてほんとうを、誰もが夜乞に述べたてるのがいまなのです。
潰えきった在りし日の燈の赫赫と灼きつけられて堪えがたいいまが私たちのひとつかぎりのいまなのです。
希望などというありうべくもないものの、しかしわずかばかりにうつされた翳、かすかにひらめく漣の、どこよりか感ぜらるる才のそれきりひろって漸うにたもつ絲のたどるさき、そのさきに待つあなたのいまだのぞむことの叶わないでいます。けれどもそれでもそんなでだって私、私は────。
とりこぼした星みたいな壊れかたをした。
貴女は噤んだくちびるを、あたしにかすめて微笑みながら、世界だったいくつもの欠片をつまさきに弄んでいる。
「なにもかも、ぜんぶがぜんぶばかみたい。だあれもなんにもたすからないでぴいぴいとみじめにしぬしかなかったなんてしってたのあなた。ふざけるみたいにあんなふうに。あれ、ねこ、どこいったのねこ」
撫でられるみたく毛の撓む嘘がちらついて本当がわからなくなる。
「ねこ」
いた?
「いた」
貴女は貴女の血の髪の、手首にからませて並列する夕溶けをなぞった。
「くだらないぜんぶだとかどうしようもないぜんぶだとかばかみたいなぜんぶがあなたのすくいになればいいっていまならちゃんとおもえるよ」
うん。
「おもいだせないことばだとかおもいでみたいなだれかだとかおもいちがいのおうたみたいなぜんぶだよ」
うん。
「わたしがすきだった、だいすきだったぜんぶなんだよ」
うん、ありがとう。
時間のゆるかにくだけちってなにより綺麗だった。
窓辺にゆらめく最果てみたい、なによりも。
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