『ニニと神さま』#3

 うたえば地平のくずおれて、陽に夜に三世みつせもとらえない。
 かけらのひとつも変わらないでふがふがとカフはかわいいままで、いつしか知れないねこまでひきつれわたしたちは無涯を歩いていた。
 理を浴びる。
 果てはない。
 果てなどないという事実のどこまでもはてしなく、わずかも無くしたねむりとたがわず心のはてまでなくなるようなつたないわたしですこしばかりのさびしさだった。
 背の指のつまさきの表象のひりひりとつめたい騙りのまつわるふうにひらめいて、もうないひかりのまぶしいような錯覚が朝に似る。
 かすかな哥音のゆきさるみたいな境界づたいにひもとくことばの揺曳するのがわかった。
「ねこ」
 ねこは、鳴かない。
 ねこは、死なない。
 ねこはねこらしくカフのくるぶしをかすめながらわたしを見ているふうだった。
 そう見えて、だからねこにもそう見えるわたしがわたしらしく見えてもいるはずで、だから、ねこは、ねこらしく思索をくりかえすのだろうと、そう感ぜられてわたしはだから、これはきっとせかいでいちばんねこらしいねこなのだろうなどとぼんやりと考えているのだった。
 ぼんやりと、はっきりしないでねこらしいかげになにかを見いだすわたしであるらしかった。
 もういないだれだかの、かげ、いつだかに、永く、ながく、ながいあいだめぐった夢みたくきれいに、ねえ、おもかげひとつもよばないこえの、まぼろしめかしてうるさいこえの、こんなにもいとわしい、きらいなひびき、だいきらいなひびきのうちすてがたくわたしを偽装する。
 わたしはわたしで言葉のままで、誰かはだれかで記録のままで、変わらないで遊ぶふうに虚構を泳いでいつまで過ぎても気に入る今日などきやしない。
 愛みたく、あい、みたいにおもうなら、わたしのゆらめくまんなかに、わたしが祈った星星の、にじんであざれる星星の、いつだって、零れる、いつだって、拉いだ。
「ニニ」
 カフ。
「ニニ、なくのね」
 そうだね、きっとね、泣きたいね。
 わたしはわたしでわたしじゃなくて、だから、いまから泣くんだね。
「カフみたく?」
 そうだよ、カフ。
「カフは」
 カフは、ちがう?
「ちがうよ、カフは、ずっともう」
 カフは、どうして?
「カフは、いないよ、ここには、どこにも」
 カフ、カフ、どうして、カフ?
「ニニ」
 カフ。
「すきだよ、だいすき」
 世界のへし折れる。

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