高く、たかく、とどきようもなくたかくつづく、遠くまで、はるか。
「白葉の苑のひずみのように風糸を編む秭の青が見たい、呼ぶ聲の幾重にも透く夏かげに漬つ久堅をそれぎりずっと見ていたい、降るのなら、千の燈の、いつけるふうに頻く弭水縹、ゆらの辺、浅緋の差錯ように澄み文無してそればかり淡い夜の果てにまで、さいはて、あなたまで、愛まで」
ひそめる、ひそめてなぞる、干渉する音のゆきみちを知るばかりがわたしのひとりのほとんどの、時間、じかん、じかんというものを占めていたんだとおもう。
願いの過ぎて、祈りの過ぎて、凝ることばのひとつきりさえおぼえるこころの欠いてなお、それでもつづいたわたしのこのあらわすもののあてはまるもののないわたしのなにもないわたしのなにも、なにも、息すらつまって切る管の熱さのそれっぱかりがやかましいわたしのないゆびのうでのないはずのひかりの、やけつくみたいにわたしのためにわたしに、どうして、だって、わたし、なんにもしなかった、わたしなんにもぜんぜんしてあげられなかった、みつめるきりさえしなかったしねばだからいい死んで、どうして。
「きれいなうただとおもったよ」
「きれいなばかりですくえない」
「すてきなうただとおもったよ」
「すてきなばかりですくえない」
だから、
だから、いちどだけ、
おねがい。
「とっくの昔におわってたんだよね」
なに
「はじまりなんてなかったみたいに」
なにをいっているの
「ばかみたいだよね」
そう
「うん」
でも
「うん」
すきだったんだね
「うん」
ねえ
きれいなばかりのこのよるのまだだれだってとどかないどこだか
すてきなばかりのこのよるの
とおく
ふかく
のぞむかぎりにうつくしい
どこだかに
だれにもわからないばしょにまで
わたしがつれていったげる
ばかみたいに
うそみたいに
あいみたいにうるさいばしょにまで
きっと
「だから雪みたく咲く花の触れて揺れて憂うふうな朱を置くの、ここに」
まだ白いままの壁に刻む文言なんて誰ひとり思いつかないでいるくだらない放課後の夢だと思っていた夢であればなんて勝手。
僕、いや、僕たちの間柄は複雑で難解でだから君に説明したところで理解のひとつも得られるなんて思わないんだけどまあだんまりなんてそんなのがらじゃないもんで、ないですよ、ない、から言うよ好きだって、好きでしたって、わらうなよ。
「ちいさくったって焔の流れる、世界に、流れたら、わたしならわかるよ」
そんでもって錯覚のどうしようもなさをわたしはきみのせいにしてぜんぶに背をむけたってことで、どうするかなこのどうしようもなさ、ええ、泣いても帰れる家すらないぜ、ふっとんじゃったもん。
「星ごとねえ、ははは」
なあにひとごと?
「ひとごとさ」
ですよね。
「よう、こいつをやるよ」
あら。
「名前をやりな。とびきりのをさ」
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