自生する星星を追ってぼくらは暮らしている。
陽の夜の尽きはててひさしい薄闇にぼくはまだきみのかけらを探しあるいている。
「旅の途上に拾ったの。花環に編まれて名の失せて、そのくせ散れも枯れもしない。ねえ、どうしてかしら、私、どうして私、こんなにも、いまも」
逸らせやしない道はてに、つづらにまつわる四季を浅くなぞった。
「ゆびさきに遠い、つめさきにとおい春のあわく透きとおる蒼をかたどって撓むの。たなびくふうに風が条をなす、あなたの翳ごと呪るよに、刮ぐよに、きれいに。そうなの、きれいなの、きれいで、きれいで、このうえなくきれいで」
だから大好きだった。なによりも。だれよりも。
「うそ、なんかじゃないよ」
きっと、見つかったりなんてきみはしない。
どうあったってなんだって、とどいたりなんてきみはぜったいにしない。
それでもつづける意味なんて、どこにだって、わかってる、ありはしないけれど。
だからと棄てさるひとつの訳さえ紡いだ虚にはかすめない、けれど。
わかってる、けれど。
「夕凪。おぼえていますか」
はだれに咲き染む白雪に似た。
「水月。おぼえていますか」
戯れるばかりの真空に藍に、すこしばかり似た。
「廃塔群は縫うように光の翻る日を迎えていました。幾度ともなくかたどられたくだらない世界の幾度めだかのいつわりでした。私のいちばん好きだったばかみたいなくりかえしの惨めなみじめな揺曳でした」
だから、おぼえてる。
忘れたりなんてしない。
「永遠だって、信じられるくらい」
きみの声がする。
無涯のさきに、なつかしい影をおとして。

『Nights Wave』
コメント