『サテライト』

階差軌道のわたしを掠めて行き去って、無数の星の、引きずりだされた血脈みたいに、赤とか、青とか、知らない色とか、きみの色、だとか、きれいにならんで、此岸の涯とわたしとか、彼岸の向こうとあなたとか、つないで結んでくれたなら、いまだって、永遠にだって、そうあってくれたなら。


愛って言葉の、ただの言葉の、だからこそその本質の語り得えないだなんて利いた口の、いつかのあなたみたいにあたしは吐いて、つづらに折れた多元の空の、いくつもの過去、いくつもの未来をこの手にあつめては、こどものちいさな容れ物だったものの、いまは硝子の水底に、飴玉みたいに転がして、飽くこともなく眺めてる。知らないの、わからないの、ほんとうなんて、なんにも。でもね、きっとまあるいものなんだって、思ってた。見て、あの子が私だったの。あの、ちいさな女の子が。わたしだったの。


透水するわたしは、わたしね、息のできなくったってそんなのは素敵なだけのことで、輪郭のぼんやりとしたちいさな肺のなかみ、あなたに差しだして窒息すればいいって祈ればよかった。


なのに、ぼくにはできなかった。ぼくはきみがすきだったから、きみがしにたいといっても、ぼくはそんなのはいやだったから、ちぎれたうででだってここにつなぎとめるくらいのことはできるんだってことを、通りすぎてく衛星の、あいつらに、連中に示してやりたかった。君は悪くない。君のせいじゃないと証明してやりたかった。君は悪くない。


真っ暗な夜も、昔はそんなことなかったんだってね。書いてあったよ、昨日読んだ本に。けれど、誰が信じるんだろう。だって、何を想えばいい。塗り潰された空の下、君のいない彷徨う星で、夢みたいなことを、きれいなまぼろしのことを、ひかりのあわい薄闇でまどろむ、やわらかな、やすらかな日のことを、君みたいな日のことを、どう描けばいい。どう願えばいいんだ。


ご覧ください。気の遠くなるほどの過去、わたし達の祖先の生まれるずっとずっと前、太古の宇宙の、最初の光と最期の光のまじわりあって生まれた領域です。ご覧ください。散り散りになった星があります。ご覧ください。散り散りになった夜があります。ご覧ください。散り散りになったあの人があります。わたしの、あなたがあります。いまでも。いつまでも。愛してる。

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