階沿いに春みたく在る燈のこの手にすくいあげられたならよかったなんてことをつぶやいているの、きみは、とっくに忘れてはじめて出会ったわたしたちの夜、穂月のこぼれてつめたい気配をやさしく水脈に変える夢を見ている
ねえ、かかげるくらいに愛しい花ならかんむりなんかはいばらでよくて、わたしは額にちいさなしるし、あなたはあなたをいちばんふかく、誰よりもふかく傷つけてしまいたかったんだね
報われないならいらない言葉、そんなものばかりをさがしてぼくらはいちどだって泣かなかったけれど、崩れるそばから連れだすかたちのもういないなんて嘘ひとつぬぐいきれないでだからお祈りをしたかった
たったひとり、きみにだけはすくわれてほしかった
まだ遠い終わりだよ
まだ淡い最後だよ
時間の焔のように刻まれていまをうつしだしているのかもしれないよ
あたしもきみにもここしかないよ
あたしのどこにもこたえはないよ
星の潰えてゆきはててどんなにきれいかってことをぼくはあなたにつたえたかっただけなんだよ
なんにもならないひびきだよ
なんにもならないきおくだよ
でも
ぜんぶがたからものなんだよ
ぜんぶがあなたのやさしさに
つながってだからいまだってさびしいんだよ
ひかり
ぼんやりともうねむらないきみのゆびさきにゆれている
すこしも知らないあたしでいいよ
すこしも消えないわたしでいいよ
すこしもどこにもとどまらないで
とけだすみたいなふざけた青で
いまだけは
それでいいんだよ
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