『流転』

まひるの街に睡るなら、逆巻くひかりの薄らいで、永遠だとかなんだとかばかみたくさわぎたててゆきさった誰だかのうそくらいあまやかにかすんでゆくのだろう。言葉の此岸に沈みこんで滲む、あたしの知れない風の背に、見たくないことのそればかりが結ばれて軋む、まひるの街に睡るなら、きっと。


時の凪いで黒沙の波に澄みわたる夜を見たの。夜、夜、夜、星溶けの夜をいくつも呼びたかった、あなたのために、わたし、あなただけのためにこえのひとつのとどきようもなくねじきれてゆめならいいとおもった子どものころを灼いたのに、なのにこぼれおちればしずかに揺らえる旋律かぎりがこの睛の無彩にのこされて、ほしかったものは、ほしかったひとは、だいすきだったひとはいちどきりさえかえらなかった。ゆびさきがつめたい、硝子の水よりもつめたい、うつしだされた月よりずっとつめたい、崩れおちれば花より雪よりどこまでだってつめたい、いつだって。


紙片のならびにささめく君ならいくらでも、きれいにゆがんだ綴りの果てまでほころぶみたいにたどりついてしまえた。けれども僕にはその術がなかった。祈りたくても捧げる哥がなかった。あらゆる響きにひもづく聲が、僕にだけはなかった。夕暮れ、図書室をゆきすぎるたびにまだしない約束をおもいだす。果たせなくとも微笑みかえせばうつくしい、世界のすべてが君だった。ねえ、僕がどれほど君を好きでいたか、君は知らなくていい。僕が、どれほど君を愛していたか、君は、知らないままでいい。もう二度とめぐることのない日日を、ここがまだ憶えてる。だから、僕はそれでいい。

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