おもいでばなしのありふれる、揺らぐ、今日とか昨日、いつだってわたしたちはすれちがってだれかを忘れた、あなたを
月の痕跡に朝のひかりがゆれるふうでふれる、遠い風を見ている、ひとりならばよかった、きみがいればよかった、声なんてきこえなくてよかったすこしばかりもかすめないで夢のままでさかさま、翻ってうつくしいの止みもしない呼声、残響だとかこのうえなく青く似る雨だとかでたらめばかりを歌えた花に似る雪に、言葉に似る、あなたに
ゆびさきだってやわらかく滲むくらい最果て、透明、眠りなんかいらないの願うなら、流れる? 水であれたなら、距離のいくつかはぼくたちの抱える境界を溶かしえただろうかさざなみ、気づかないでただありたかった覚めないでなにもないくらいひとりきりでいたかったたゆたう、ゆらめいて、とぎれとぎれの季節につたなさをとかした
もう戻れないで知らないで夕暮れはしずか、沙の散って時間ばかりがこぼれおちる世界を描いた、忘れられただれだかをなぞりあってぼくたちは過ごそうか、名前なんていらなかったたしかさなんてひとつだってそう言って、ばかね、ひとつっぱかしがみつからないならそれきりよかったさしだしてつないで、ねえ、そう言ったのにね
窓辺は空、きこえるの夜みたく無形に、声みたく、呼ばれたみたいにあたしだけがいまでも
コメント
すてきですね
もっとずっと聴いていたいと思いました
さぎりんの言葉は、読むというより聴くというほうがふさわしく思えるのが不思議です
ありがとねこ!
実際、書くというより語るような感覚があります
意味よりかたちよりさきに音があるということもたくさんです